Talkiyan_Honin_Jai

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今日読んだ本

『織田信長』人物叢書、吉川弘文館、2012年
  
『信長公記』と信長発給文書及び先行研究を元に、信長は「英雄」や「革新者」などではなく、自らの「分国」拡大のため状況に応じた実利的な政策を行っていただけであることを地道に記述する良書。
検地・軍役制度の整備ではむしろ時代遅れな面もあったという。
また、文書上の「天下」という言葉の持つ意味の変化についての考察も面白かった。
そして、信長への頑強な抵抗と外様家臣の度重なる謀反は一門・譜代重用、信長への絶対服従という信長の戦争、分国支配のあり方が生み出したもの、つまり信長自身が招いたものだとする著者の指摘には納得。
      
以下、本文の「第八 家臣団と知行制」の締めくくり部分を引用。
    
 戦功を積み重ねても、謀反の心をもたなくても、信長の心一つでいつ失脚するか抹殺されるかわからない不安定な状態に、家臣たちは置かれていた。一門と譜代重視のもと、譜代でない家臣にはより強い不安感があった。独断専行的で、合議の仕組みもなく、弁明・弁護の場も与えられず、家臣に連帯がなく孤立的で、信長への絶対服従で成り立っている体制が、家臣への将来への不安感を高め、謀反を生むのである。
 光秀の謀反は、村重らのように城に立て籠もるのではなく、信長を直接襲撃するという手段に出て成功できた。単独で極秘に策を練り、機を逃さなかったことが成功へ導いた。だが、それゆえに連携がなく、次への確かな展望と策をもつことができなかった。
(p.276)