RASEN-KAIDAN

俊成(毒饅頭)さんのエントリー

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今日読んだ本

佐野眞一 『巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀 上・下(文春文庫)』 2000年
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上下巻合わせて1000頁に迫る分量の文庫版を図書館で借りて読みました。(単行本は718頁)。
警察官僚から読売新聞の経営者に転身、傾いた経営を立て直し朝日・毎日と並べる部数に押し上げる。プロ野球の創立に尽力し、戦後は公職追放を受けるも、解除後はテレビや原発の父と評価されるようになった正力松太郎の評伝です。事業家としての下巻に比べ、弾圧の記述が続く官僚の上巻は重たくて中々進みませんが引き込まれる内容です。

警察官僚時代の正力は社会主義者に徹底弾圧を加え、関東大震災時には朝鮮人暴動の噂を止めずお墨付きを与え、軍や自警団による虐殺を招く。しかし後年日本テレビを開設し、プロレスを目玉番組にしたにも拘らず、在日朝鮮人である力道山との接触を避けている。更に最晩年には自宅の庭に朝鮮産の石を敷き詰め、とりつかれた様に磨いていたという長女の証言にも触れる。とても償いにはなりませんが、彼なりに罪の深さに脅えていたのでしょうか。

裕仁親王暗殺未遂(虎ノ門事件)を招いた責任で1924年(大正14年)に警視庁を退職、読売新聞社長となり、リベラルな執筆者を追放しますが、文筆・絵画などの才能があれば紙面を任せる懐も持ち合わせます。戦後の労働争議では会社の役職から追われますが、正力(正確には務台光雄)が開拓した販売店の店主たちが左傾化した執筆者を嫌ったという事実も、日本の保守層の強さを知る上で見逃せません。

更に近年の自主規制問題とプロ野球に関して書いたものがこちらです。
http://h.hatena.ne.jp/RASEN-KAIDAN/228175949491455103
http://h.hatena.ne.jp/RASEN-KAIDAN/81791368692806580