RASEN-KAIDAN

俊成(毒饅頭)さんのエントリー

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今日読んだ本

西部邁×佐高信 『思想放談』 朝日新聞出版 2009年

CS放送で行った思想家をめぐる対談。安倍晋三や西田昌司を持ち上げる姿勢は酷いが、近代や進歩を懐疑的に見る姿勢には時には目を通そうと思わせる、そんな人物が西部邁。近代への懐疑の姿勢だが、例えば『平等は大事、しかし何が平等なのかという基準は歴史的に由来するべき』という具合。左右両極の激突だが新自由主義批判は共通。「競」という字はは二人があい並んでいる意味だと聞くと武田鉄矢の「人と言う字は~」よりはタメになる。

佐高はマルクス主義者が転向して満洲国に協力したことを「生産力信仰」と表現。平等の魅力ではなく生産力向上への毒に魅入られた、みたいなもんか。(私見です) 西部が右翼を裏切る場面が面白い。『臣 茂』と署名した吉田茂を尊皇家ではなく天皇とつながるアピールではないかと批判、自分も嘗て「不逞の輩」の左翼だったと。

歴史に根差さないと言ってアメリカを嫌う西部だが、自分の出身地の北海道も同様に「歴史がない」と言ったりするのが私は嫌でした。アイヌに根ざした近代を阻んだのはヤマトでは? が拭えませんから。しかし田宮虎彦『落城』という小説を引用し、長州に敗れた東北人が老人となってから大東亜戦争の敗戦を喜ぶ場面に共感した、と語る場面には引きつけられます。老人は「薩長の日本」の敗北に喜んでるようですが、保守主義者・西部邁が自身に湧きでる破壊衝動を語ることの魅力を感じます。こういう自分に関わる複数の公共どうしの葛藤を安倍晋三に言ってくれなかったものか。これを左の佐高が引き出したのが対談の成果、何冊かシリーズがあるので通読してみます。