超短編

"超短編" でひとこと

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princo_matsuri

超短編

俺は撮り鉄、列車を撮るためなら何でも破壊してきた。看板、樹木、建物まで破壊した。
ある日、巨大隕石が地球に落下するという。落ちれば世界の何分の1かが消失するらしいが、俺にとっては撮影のほうが大事だ。
さて、今日も撮るためにあれを破壊しに行くとしよう。
princo_matsuri

超短編

「今西暦何年だ!?」

目から覚めてタイムスリップしたという感覚は確かにあった。起きてすぐ妻に確認する。
妻?時間移動をしていればいないはずだが…。
「今日は2018年よ、昭和93年。変なことを言うのね」
どうも思い過ごしだったようだ。
ブラウン管テレビの電源を入れ、チャンネルを回す。
今日もウィッキーさんは街で通行人を追いまわしている。2018年の朝、いつもの風景だ。
hide-psy

超短編

「このハムエッグ、いつもと違う..」
「そうだろう、いつものスーパーで売ってる4枚切りパックじゃないぞ。紐で縛った太っちょのハムは見たことがあるだろ?あれを少し厚めに切ってつくったハムエッグなんだ。美味しいかい?」
「うん、すっごいジューシーで美味しい..」
その朝、ランドセルがほんの少し軽く感じた明子であった。
princo_matsuri

超短編

[http://h.hatena.ne.jp/princo_matsuri/279641433283565129title=「転生トラックの運転手に転生した件」]
彼はいわゆるファンタジー世界の普通の魔物であったが、勇者に倒されて現代のトラックの運転手に転生してしまう。
不運にも就業初日、猫を助けようとして道路に飛び出した若い男をトラックで轢いてしまう。
しかしその瞬間、彼は光となって彼方へと消えていった。あの顔は見覚えがある。
恰好こそ違えど、前世で自分を殺した勇者と同じ顔だ… 新たな勇者を生んではならぬ。その運転手は安全運転を心に誓った。
princo_matsuri

超短編

今から何十万年もの未来、生命が存在せず人工知能を持ったロボットだけが存在する世界。そこで、氷河から発掘された氷漬けの遺物をベースに人工知能が総力を結集し初めて生命を復元させることに成功した。
人工知能の祖先である名前をもじって、そのチンパンジーと呼ばれる生命体は「AI(アイ)くん」と名付けられた。
princo_matsuri

超短編

高度に科学が発達した1000年後の未来のお話。
合成された人造血液をパックで飲みながら
「ああ、たまには生の血液を吸いたいなぁ」と1000年生きた初老の吸血鬼はつぶやいた。
Dusty

超短編

昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。




今はいません。
babi1234567890

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ちくわぶ17才。「小麦粉な奴はだいたい友達」と嘯く彼の親友の名はグラコロバーガーという。
princo_matsuri

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そうめん職人の朝は早い。
「まぁ好きで始めた仕事ですから」
装置から射出されたそうめんはその瞬間、世界で初めて音速に達した。
babi1234567890

超短編

ひるごはんを食べ終えたばびは飢えに苦しんでいた。
彼はこんびにのぱんやにくまんでなんとか飢えをしのいでいた。
princo_matsuri

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「演劇部、2年間おつかれさまでした。先輩の表現力にはいつも驚かされました。」
「いやあ、僕なんてまだまだ… あ、ところで、最後にひとつ確認したいことがあるんだ」
「何ですか?」
「まだ… 気付かない? この演劇部そのものが演劇であったことに。
 以前、君が失敗したときに慰めながら笑いをこらえるのに必死だったよ。
 でも大丈夫。僕らも先輩から同じ洗礼を受けてね」
「」

この学校の演劇部2年生は1年を通じて先輩を演じるのが恒例となっている。

「ねぇ君、新入生? 演劇部やらない?」
princo_matsuri

超短編

ある山奥の洋館で連続殺人事件が発生した。
洋館に招待された10人のうち通報した第一発見者を残し9人全員が殺された。
その日は嵐で洋館に続く唯一の橋が決壊し孤立状態、外部の犯行によるものでは無い模様。
第一発見者「誰が殺したんだ…」
say-01

超短編

妹の学校でお昼の放送にボカロ曲をかけるのが禁止された。
機械だから?歌詞がわからないから?
どうせそんな理由だろうと想像しつつ、私は母校であるその中学に問い合わせてみた。
納得できる理由でなければ妹のために戦うつもりだ。
問合せに応じた教頭はただ「数日にわたりボーカロイドとやらの曲ばかりかけていたので禁止になった」と短く説明してくれたのみだった。
私はさらに部活の後輩や友人から情報を集めた。

まとめると、事実はどうやら私が想像していたのとは違っていたようだ。
妹の学校では、私が卒業した翌年に放送委員が廃止され、昼の放送も教師によって行なわれていた。
担当の音楽教師はいわゆる「ニコ厨」
彼こそがボカロ曲を流し続けた犯人だ。
吹き上がったのは高校受験を控えた3年生たちだった。
数人の有志が校長に直訴した。
「いつも私たちの好きな曲だけかけて欲しいとまではいいませんが、連続してわけの分からない機械的な声を聞かされるのは苦痛です」

…それで全てのボカロ曲が禁止になったということに、私はやはり抗議しようと思う。
princo_matsuri

超短編

その学校では、特定のジャンルの曲を流すことが禁止された。不快だから、ただそれだけの理由で。
しかしそれを皮切りにありとあらゆる方面からの圧力により全ての音楽は禁止され教室は静寂に包まれてしまった。
そんなある日、一人の学生が歌を歌い始めた。好きな曲を流してくれないなら自分で歌うしかない、そんな子供ながらの精いっぱいのささやかな反抗だったのだろう。
するとどうだろう、皆がそれぞれ自分の好きな歌を歌い始めたのだ。

この学校にボーカル専門学科が作られ有数の名門校になるのは十年後のことである。
say-01

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あの男とオフで会った者は、一人残らずハイクから姿を消す
そしてツイッターが落ちた時だけ現れるようになる
princo_matsuri

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冴えない一人の若者がある能力を手に入れた。
鉄骨が頭上に落ちてくればそれはタライに置き換えられ、不良に絡まれても一声で野郎どもは必ずずっこけ、
殴られてもハリセンに置き換えられるし、車に轢かれれば飛んだ先でゴミ箱に頭を突っ込み必ず生還する。
缶ジュースが200万円することに不便を感じていたようではあるが、
この能力を「コント」と名付け、決して死なないことを確信したその若者は自らを神と名乗った。

その晩、神は豆腐の角に頭をぶつけて絶命した。
say-01

超短編

その人とはメールを交わすだけの友達だった。
庭で育てた花の写真を毎日送ってくれた。
あんまり上手な写真ではなかったけれど、ひきこもりがちな私の心を温かくしてくれた。
しばらくののち私は殆ど登校できなかった学校をやめて、少し離れたところに転校した。
その頃から、その人から送られてくる写真がなんだか違う様子に見えた。
学校で新しくできた友達がふと覗き見て言った。
「それ、図書室の図鑑の写真を写メったの?」
私はどういうことか理解できず、とにかく図書室でその図鑑を探した。
図鑑は借りられたままだった。
私が転校してくる少し前からずっと。
図書係がこっそり教えてくれた。
どういうわけか、とにかくそれを借りた生徒はずっと学校に来ていないらしい。
MANGAMEGAMONDO

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「どこに行っていたの?」
「自分探しの旅……っていうか今、妙蓮寺」
「乗り過ごしたの?」
「コッチジャナイ。なぜオレは対岸にいるんだろう?」
「今、いくら持ってるの?」
「えーと、引き出物持ってて……三次会も行ったから……」
「で、今、いくら持ってるの?」
「えーと、今の時間ならまだ電車あるから」
「だーかーらー、今、いくら持ってるの?」
「あ、ハイ。5000円くらいアリマス」
「そう、ごくろうさま。じゃ、さっさとタクシーで帰ってらっしゃい」
MANGAMEGAMONDO

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アカシアの雨にうたれてこのまま死んでしまいたい……

空の近く、森の高い梢にアカシアの白い花の靄がたちこめる。
カスミソウのように純白でなく、フジのように艶やかでもなく、
濁り湿った乳色の粒が色濃くなってきた木々の葉の緑を滲ませる。
アカシアが咲く梢を眺めては、中空高くふわりと舞い上がり、
その白い靄に吸い込まれるさまを夢想し、憬れる。
甘く芳しい蜜を湛えたアカシアの雨に満たされて、溺れ死ぬ。
白い靄に群れ集うチョウやハチ、小鳥たちがそうしてきたように
その香に噎せ返り、そして眠る。
連綿と続く営みを何年も何十年も見つめてきたアカシアに看取られたなら、
無限と続く短い命の鎖に入れるだろうか。ひとつの環になれるだろうか。
ミルクティー色の水溜まりのごとく足下にくすんだ花弁を敷き詰めた……

……アカシアの雨にうたれてこのまま死んでしまいたい。
princo_matsuri

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「2アウト1塁、うーん、ここは代走にするか、代走!おーいだいそー!」
「呼びましたか」
「誰だお前」
「ダイソーです。105円で走りますよ」
「なぜかベンチにお前以外誰もいないし…仕方ないな、ほら」

打ったー!左中間…
「おお!代走速い!ダイソー安いのにすげー速い!
 ホームまで帰ってきそうだ、いけ!」

…パシッ
フライ球、うまく取りました… 3アウト、チェンジです
say-01

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【サンダルおじさんの挫折】
http://h.hatena.ne.jp/naming_ohji/9234077188272692257
 
サンダルを履いたおじさんなら、この町でも珍しくもない。
サンダルおじさんがサンダルおじさんと呼ばれるのは、彼の特殊なサンダル使用法に因る。
サンダルおじさんはアーケード街のシャッターが降り始めるころ現れて、スーツの内ポケットからサンダルを取り出し、肩、太腿、背中に打ち付けて「パカポコパカポコ」とリズムを奏でるのだ。
 
ゆらゆらと気持ち良さそうに揺れながら、サンダルでリズムを刻むおじさん、
アーケードに反射して、響き渡るサンダルのパーカッション、
駅へ向かってアーケードを抜ける仕事帰りの人たちの耳にはすでに環境音の一部だ。
 
だが、その日、おじさんの演奏を腕組みしたまま真剣に聞き入る男がいた。
男はおじさんの演奏が終わると、名刺を取り出しおじさんに渡し、なにかふたことみこと告げて去った。
おじさんはしばし呆然と男の背中を見送っていたが、やがて名刺を固く握りなおして力強く駅の方向へ歩いていった。
 
男は、新聞社のウェブニュース担当の記者だった。
おじさんは【遅咲きのミュージシャン、サンダルが刻む希望のビート】なんてくだらない見出しで記事になった。
 
ーどうしてサンダルで演奏しているのですか?
ー俺はビートを刻みたいだけなんですよ。そのための努力ならします。だけど、ビートを刻むのに楽器が必要で、だから無茶して金貯めて楽器買うなんて、俺に言わせれば遠回り。働くヒマがあったらとにかく叩けってね…
 
そのインタビューはしばらくは幾人かの目を引いたらしく、いつものアーケード街には小さい人だかりができ、携帯のカメラで写真や動画を撮る人たちもいた。
 
しかし、おじさんが自分の顔をでかでかと印刷したCDを足下に並べはじめた頃には、もう、おじさんのサンダル・パーカッションは環境音の一部に戻っていた。
MANGAMEGAMONDO

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おととい襲来したミストラルは55時間わたしのからだを貫いて、
そして好きなだけ吹き荒れて、やや湿気を帯びて、今朝飛び去った。
今週末の夜、プロヴァンスに吹くミストラルには、
ほんの少し、わたしの愛とアジアの熱気を帯びていることだろう。
MANGAMEGAMONDO

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今朝は雨だが、9時、きっかり5分前に、その男はやってきた。
白髪染めはしているけど、まだらに落ちて、カーキ色のコートは肩がまだらに濡れている。

男が無表情でカウンターに立つと、おそらくパートであろうおばさん
――よく見れば、新珠三千代みたいなつくりだと気づく。
ビニールの前掛けに白い長靴、それに少々、肌がかさついているのが残念だ――が、
ひらりと彼のほうに向かって、身をひるがえし、
薄めの笑顔で「いつもの?」と尋ねる。
男が無言でうなづいてから、きっかり2分22秒で
カウンターに湯気のあがった“たぬきそば、わかめ、卵入り。ねぎ大盛り”が供され、
男は500円玉を渡し、おばさんは「ありがとうございます」と薄めの笑顔で10円返す。
卵やわかめやねぎやつゆを吸った天かすが気まぐれにからむ蕎麦をささっとすすったあと、
カウンターの蕎麦湯を残り汁に少し足して、男はごくりと飲む。
空のどんぶりを「ごっそうさん」とカウンターに置くと、
9時5分過ぎに男は出ていく。おばさんの薄めの笑顔と「いってらっしゃい」を身にまとって。

その日が平日ならば、男とおばさんの人生には
9時5分前の10分間のイベントが必ず起こる。
起こり続ける限り、今日も明日も明後日も、生きていけることを2人は知っていた。
princo_matsuri

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チルチル・メチルの青い鳥
「青く燃える鳥は最初からここにいたんだ!」
チルチルとメチルは視認することのできないメチルアルコール(メタノール)の
炎でできた鳥の存在に気がついた。
princo_matsuri

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早退性理論
嫌いな先生の授業が始まる前には彼は家に帰ってしまう。
彼がいるうちにその先生がやってくることはない。
kamiaki

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あえいうえお 蒼いヴェールの向こう
かけきくけこ 過去のささいな裏切りが影の中
させしすせそ 誘うように脳裏にちらつく
たてちつてと 多島海の浅瀬に沈めた筈の
なねにぬねの ナノメートルの後悔が膨張を始める
say-01

超短編

また美容院を予約してしまった。
先週切ったばかりなのに。カットだけお願いしますと、また電話してしまった。
 
もう、名前も覚えていない…というか、ハンドルネームでしか呼び合ったことなかったあの彼。
なんであの男はあんなこと言ったのかな。あれは確か出会い系オフではなかったはず。
「俺が伸ばしてって言ったら伸ばす?」と言われて私は「伸ばさない」と答えた。
 
そうだ。あの時から、私は髪を伸ばせないでいる。
なんて強力な呪詛だ。
say-01

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「俺って雨男なのよ」
雨男/雨女を自称する人って、自分一人の都合で自然現象がどうにかなるとでも思ってるのか。
病気自慢のようで、不幸自慢のようで、うんざりする。
 
そこで「私は晴れ女だよ」と返す。
 
彼が「だって大事なイベントのときは必ず雨なんだ、ホントに」と言うから。
そのセオリーを当てはめると、晴れた日の私とのデートは彼にとって大事なイベントではないってことになるではないか。
 
今年二人揃って花見のチャンスは恐らく今日が最後。
窓の外に見える空は朝から明るくなったり陰ったりを繰り返している。
彼の「雨男」パワーと私の「晴れ女」パワーと、勝つのはどちらだ。


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