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id:Knoa ミャンマー国民が「不法移民」のロヒンギャ排除を強く支持しているのは事実ですが、スー・チーさんがロヒンギャ融和策を訴えたら本当に支持を失うのか、それは不明です。

スー・チーさんがリベラルな信念の持ち主なら、リスクを冒してでも、正義を訴える方を選んだのではないでしょうか。

しかし功利主義的に考えるなら、ここでスー・チーさんが退場しても、次の為政者がロヒンギャ攻撃を続けるに決まっているわけです。ロヒンギャは見捨てて、スー・チーさんが現在の地位にとどまり、他の問題の解決に勤しむ方がマシだという考え方も可能でしょう。

スー・チーさんが本音でも排除支持なのか、苦渋の決断で座視しているのか。いずれにせよ、スー・チーさんが「自分の存在が助けになる」と考えた人々の中にロヒンギャは含まれていなかった、とはいえると思います。

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国民の大多数が強く望むことを、一存で止められるような権力者が、民主国家にいていいのかどうか。あるいは、そんな権力者が存在する国が、民主国家と呼べるのか。

スー・チーさんがロヒンギャ排撃を止められないのは、自然なことではあると思います。

かつての軍政は、軍政であるというだけでもアメリカ等から抑圧され続けており、国際社会の武力介入を避けるため、また経済制裁の強化を避けるため、どんなに国民の圧力があってもロヒンギャの徹底討伐を行うことができませんでした。国民の希望を無視しているわけではありませんよ、というポーズを示す必要はあったものの、国際社会からの決定的な非難を招くような事態は避けざるを得なかった。

この事例に倣うならば、スー・チーさんだって、以前と同程度の抑圧に留めることは可能なように思います。ただしそれは、今すぐ権力を失わずに済むというだけの話で、次の選挙や、党内の権力抗争での将来的な敗北を招く原因とはなり得ます。

あるいは国際社会の側も、相手が軍政からスー・チーさんに変わったからといって、軍事介入や強力な経済制裁をも選択肢から外さないことが、当座の悲劇を抑制するためには必要なことだろうと思います。万が一、スー・チー政権が倒れて、旧軍派が政権に復帰してでも、そうするんだ、という覚悟が必要ではないでしょうか。

それはできないというなら、結局は、ミャンマー国民に民主主義を与えるためにロヒンギャを見捨てるってことです。いまのスー・チーさんと同じです。

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ミャンマーを「ビルマ族を主とする民族国家」と考えれば、たしかにロヒンギャは異民族です。ロヒンギャは現ミャンマー領土に伝統的に暮らす部族ではない。また彼らは言語、宗教、生活習慣のいずれについてもミャンマー人への同化を拒否している。

ラカイン州はラカイン族の王国が長く治めた土地で、ビルマ族が支配したのは18世紀から。19世紀にはイギリスが支配したのだから、ビルマ族の土地ということはできない。ただラカイン族とビルマ族の社会は共通点が多く、交流と融和が進んだ。ビルマ独立直後にはラカインは自治州になるという話だったが、結局立ち消えになった。自治州支持派からすればビルマ族の抑圧となるが、現時点では自治州支持派も少なく、融和を目指した側が平和的に勝利したといえる。

ロヒンギャがラカイン州で大きな勢力となったのはイギリス占領下でのこと。前述の通り、ロヒンギャは先住民族との融和を拒否したから、ラカイン族とロヒンギャは激しく対立することとなった。そして、イギリスが去った。

ミャンマー国民から見れば……「伝統的ミャンマー人」の範疇にない人々が、ミャンマー人たちの伝統的領土に居座っている。彼らはかつてイギリスが認めた移民であっても、民族国家ミャンマーからすれば不法移民である。当時のミャンマー人は虐げられており、国家の主権を発揮できなかっただけだ。ロヒンギャは元いた国へ帰るべきだ。……ということになる。

ロヒンギャが移住した時点では不法ではなかったのだし、移住して100年以上も経てばミャンマー以外に「本来の居場所」は存在しない。ミャンマーは彼らを国民を認めるべきだ、とは思う。

ただ、ロヒンギャの人々が武力闘争を勝ち抜くのではなく、平和的な解決を目指すなら、ミャンマー人の社会の中に居場所を得られるよう、様々な点で譲っていく必要もあるはずです。最低限、言葉は学ぶ必要がある。ロヒンギャ側が何も譲らずに、ミャンマーに居場所を得るというのは、まず不可能な話に思える。

これを「偏見の問題」というのは片手落ちです。たしかに偏見はある。しかしロヒンギャの側が、「ミャンマー人国家の中に入って生きていく」ことを拒絶し、自分たちだけで固まって生きていこうとしていた、しかしその土地は伝統的にはミャンマー人(ビルマ族もラカイン族も現在は「ミャンマー人」という意識を持っている)の土地だった、という話でもあるのです。

ロヒンギャがどうしてもミャンマー社会への融和を拒絶するなら、国際社会の圧力でミャンマー人の気持ちを無視して無理やり自治区を作るか、さもなくばバングラデシュを支援して移住を可能とするくらいしか先はないんじゃないでしょうか。